実験レポート#001: 1万円で回せる自動収益の検証
今回の問い
元手1万円で、投資信託(株式インデックス)の期待リターンを上回れる「自動で回る収益」はあるのか。候補としてよく名前が挙がる3手法——暗号資産の取引所間アービトラージ、ファンディングレート裁定、バイナリーオプション——を、実データで仮想検証した。
比較の物差しはベンチマークの実績。Yahoo Finance の週足データでは、S&P500 は直近1年 +12.4%・直近3年は年率 +20.2%、日経225 は直近1年 +25.2%・直近3年は年率 +25.5%だった。直近3年は歴史的に強い相場で、長期平均の目安(年5〜7%程度)より高い。それでも「上回る」と言うからには、この水準を意識する必要がある。
検証1: 暗号資産・取引所間アービトラージ(国内)
GMOコイン/bitFlyer/bitbank/Coincheck の公開ティッカー(最良気配)を約3分間・3秒間隔で取得し、BTC/ETH 各22サンプルについて、買う側の提示価格+Taker手数料、売る側の提示価格−Taker手数料で、手数料込みの価格差を計算した。使用した手数料は各社の公表値(GMO 0.05%、bitFlyer 0.15%、bitbank 0.12%、Coincheck 0%)。
- BTC: 手数料込みでプラスだったのは22回中14回(64%)。ただし最大でも +0.0182% で、利益が出る水準(0.2%超)は 0回。片側5,000円で計算すると最良ケースでも +0.9円、プラス回の平均は +0.3円
- ETH: プラス 0回。最良でも −0.11% で、常時手数料負け
検証2: ファンディングレート裁定(デルタニュートラル)
OKX の BTC/ETH 無期限先物について、過去約92日分・277回の資金調達率の実績を集計した。現物買い+先物売りを同額持って価格変動を相殺し、資金調達率だけを受け取る想定。元手1万円は現物5,000円+証拠金5,000円に分け、レバレッジは1倍。
- BTC: 平均 +0.0056%/8時間、プラス回 92%。想定元本ベースの年率換算は +6.17%、元手総額ベースでは +3.08%。往復手数料を引くと年率換算で約 +2.5%(精密には +2.47%)、1万円を90日運用した手取りは約 +61円
- ETH: 同条件で年率 +1.87%、90日で約 +46円
なお実務上の制約として、海外大手の無期限先物は日本居住者の利用可否や規約の問題があり、今回の検証環境からも一部取引所は取得できなかった。「合法・規約内」で国内から使える場所が限られる点も、手法の現実味を下げる。
検証3: バイナリーオプション
Binance 現物の BTC/ETH 5分足、直近約17.4日・各4,998回を仮想売買した。ペイアウトは1.8倍(勝てば +80%)と仮定すると、損益分岐の勝率は 55.6%。戦略は「常に上」「順張り(前足と同じ方向)」「逆張り(前足と逆)」の3種、1回100円賭け。
| 銘柄 | 戦略 | 勝率 | 損益(4,998回・1回100円) |
|---|---|---|---|
| BTC | 常に上 | 49.5% | −54,840円 |
| BTC | 順張り | 48.7% | −61,860円 |
| BTC | 逆張り | 51.3% | −38,100円 |
| ETH | 常に上 | 49.2% | −57,360円 |
| ETH | 順張り | 47.4% | −73,740円 |
| ETH | 逆張り | 52.6% | −26,220円 |
総合判定
| 手法 | 安定性 | 投資信託超えの上振れ | 1万円での現実味 |
|---|---|---|---|
| 暗号資産アービトラージ | △(平常時は機会なし) | △(変動局面次第・要長期観測) | ×(1回あたり円未満〜数円) |
| ファンディングレート裁定 | ◎(プラス回92%) | ×(年率約2.5%止まり) | △(90日で約60円) |
| バイナリーオプション | ×(期待値マイナスを実測) | × | × |
結論として、「安定」だけならファンディングレート裁定が唯一実測でプラスだったが、投資信託には勝てない。「投資信託を上回る上振れ」を本気で狙うなら、市場系の手法では現状エッジが確認できず、リターンが資本の大きさに比例しない事業型の収益(アフィリエイト等の発信収益)の方が構造的に筋が良い、というのが今回の到達点だ。このサイト自体が、その事業型の実験でもある。